【おまけ1】
ところで「IS曲線」っていう名前ですが、なんでこう呼ばれているのでしょうか。Iは投資(Investment)、Sは貯蓄(Saving)です。でもIS曲線を導き出す過程で投資は出てきましたが、貯蓄なんてどこにも出てきませんでしたね。ちょっと調べてみたので書いてみます。
 
IS曲線上にある点の座標を考えてみましょう。
図34_IS曲線の導出
上の図で例えば縦軸の座標がr1の点は横軸の座標はY1ですが、このY1はケインジアンの交差図で計画支出と現実支出の交点として決定されています。前々回出てきた計画支出の式は
 E = C(Y - T) + I + G
でしたが、ここではIは定数ではなく利子率rで決まる投資関数とみなします。
 E = C(Y - T) + I(r) + G
そしてこの直線と現実支出
 E = Y
の交点で横軸の座標が決まるので、Eを消去すると
 Y = C(Y - T) + I(r) + G
となります。なにやら国民経済計算の恒等式そっくりな式になりましたが、この式の場合Iは計画投資であって意図しない投資を含まないというところがちがいます。とはいうもののケインジアンの交差図の交点では意図しない投資はゼロになっているので、国民経済計算の恒等式の特殊な場合とみてもいいでしょう。
で、この式の右辺にr1を代入してYについて解いてやれば横軸の座標がでますし、またrについて解いてやってr = …の形にしてやればグラフが書きやすい関数の形になります。ただし、C(Y - T)やI(r)の形が具体的に与えられていないので、そこまでやるのはやめておきます。いずれにしてもこの式がIS曲線上の点(r,Y)のrとYの関係をあらわしています。ここから少し変形してみましょう。C(Y - T)とGを移項すると
 Y - C(Y - T) - G = I(r)
この式の左辺は所得から消費と政府支出を差し引いたものですが、ようするに稼いだお金から使ったお金を差し引いたものですから、残りは貯蓄になります。左辺には変数がYしかありませんから関数の形で書いて貯蓄をS(Y)とあらわすと
 S(Y) = I(r)
となり、IS曲線上(意図しない投資のない均衡状態)では計画投資と貯蓄が等しいことがわかります。IS曲線のもう一つの意味は計画投資と貯蓄が均衡して等しくなるような点の集まりを表しているというものだったのです。
図35_IS曲線の名前の由来
上のIS曲線をあらわしたグラフで、赤いIS曲線上では計画投資(I)=貯蓄(S)が成り立ってますが、黄色の領域ではIS曲線上よりも利子率が高く(=計画投資が少ない)所得が多い(=貯蓄が多い)ので計画投資<貯蓄となっています。逆に空色の領域ではIS曲線上よりも利子率が低く(=計画投資が多い)所得が少ない(=貯蓄が少ない)ので計画投資>貯蓄です。
というわけでこの線のことをIS曲線と呼ぶのです。

【おまけ2】
図31_ケインジアンの交差図
 ケインジアンの交差図に出てくる計画支出の線って、なんでこんななのか不思議に思いませんでしたか? 所得がゼロのときでも計画支出はゼロになっていませんが、こんなことってあるんでしょうか(そもそも国全体の所得・生産がゼロっていうのもちょっと想像できませんが)。
教科書 に書いてないので正確にはわかりませんが、私が考えるところ2つの理由があります。1つは計画支出の式
 E = C(Y - T) + I + G
で、IとGはYに関係なくつねに一定と仮定されているのでY=0の時でも存在するということです。
2つ目は、たとえ所得がなくても支出がゼロでは人間生きていけなということです。「そんなこといったって収入がなくちゃおまんま食べられないじゃないか」と思うかもしれませんがそんなことはありません。今収入がなくても貯金があればそれを取り崩して使いますし、貯金がなければ借金して生活するでしょう。というのが私が考える計画支出の線がこんなふうになっている理由です。

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今日は祝日なので軽く書ける記事を書いてみました。

つづく

2013/3/23
【おまけ1】が気に入らなかったので大幅に書き換えました。

2013/4/10
再公開しました。

 
2013/4/13
【おまけ2】を少し書き換えました。