今回はIS-LMモデルからはなれて経済成長について勉強してみます。アベノミクスの第3の矢は成長戦略ですからね。経済成長を分析するのに成長会計という考え方がありますので、これにそって見ていきます。

まず生産関数をみてみましょう。
Y = A・F( K, L )
Y:産出、K:資本、L:労働、A:全要素生産性
F( K, L ) の部分は産出(=総生産量)は土地、建物、製造機械といった資本の量と労働の量(=就労人口)で決まることをあらわしています。ただし、これにA(全要素生産性)という係数がかかっています。これは何かというと、資本の量、労働の量以外で産出に影響をあたえるものすべてなのですが、おおざっぱに技術水準をあらわす指標といわれたりします。ここから産出の増加(すなわち経済成長)を表す式を導くと以下のようになります
数式0006_成長会計の公式
ここでα(フォントの関係でわかりにくいかもしれませんが、ギリシャ文字小文字のアルファです)は全所得にしめる資本所得(土地や建物や機械をレンタルすることで得られる所得)の割り合い、(1-α)は労働所得の割合です。
これを導き出すためには同次関数におけるオイラーの定理とか使うのですが、今日は省略します(ていうか私が理解できてない(トホホ))。でもなんとなく感覚的にわかりますよね。産出の成長は資本の量の成長と労働の量の成長がそれぞれαと1-αの割合で貢献していて(足すと1になります)、それ以外の要素として全要素生産性の成長がある、という感じですね。全要素生産性は直接測定できませんが、産出(GDP)、資本の量(資本ストック)、労働の量(就労人口)はわかりますので、間接的に求めることができます。
これによって、労働、資本、全要素生産性の3つの要素が経済成長にどう影響したかを分析するのが成長会計の考え方なのです。
で、1972年から2011年まで10年単位で計算してみたのが下の表です。
表0001_日本における成長会計
αは国民所得にしめる労働所得の割合を求めて1からひき、それを40年間平均して求めた0.29を使いました。
1991年がバブル崩壊ですから、その前後のようすがよくわかります。資本、労働、全要素生産性の3要素すべてでバブル崩壊後に急減速していますね。
それでは、アベノミクスではどのようにして成長率を上げようとしているのでしょうか。第3の矢である成長戦略についてはまだはっきりとしていない部分が多いですが、今現在で明らかになっている情報から考えてみましょう。

1.ターゲティングポリシー、規制緩和
ターゲティングポリシーというのは政府が今後成長が見込まれる分野を特定して、そこにお金をつぎ込むというもので、アベノミクスでは医療・健康、エネルギー、次世代インフラ、農業・観光の4分野をターゲットにするようです。規制緩和では新規事業への参入の障壁をなくしたり、解雇規制を緩和して新しい分野へ労働力が移りやすくしたりします。これらはすべて、今後高い成長率が見込まれる分野に資本や労働を集中させるのにやくだちます。資本や労働の量は変わらなくても成長性の高い分野に資源が移動することによって全体としての成長率が高まると考えられるので、全要素生産性を高めることになります。ターゲティングポリシーと規制緩和が違うのは、前者が成長分野を政府が決めるのにたいして、後者はそれを市場が決めるということです。個人的には政府が決めるとろくなことがないので(当たるかどうかわからないし、新たな利権が発生したりする)徹底的に規制緩和を行って市場に全部まかせておけばいいと思うのですが。

2.女性の活躍
待機児童の解消や育児休暇を3年間取れるようにするなどして、女性が働きやすい環境を整えるということのようです。これは労働の量を増加させるのに役立ちます。

3.TPP
TPP圏内で関税が撤廃されれば、輸出が増加するでしょう。これは需要の創出を意味しますので、3要素のどれということはなく、増大した需要に対応するために、資本も労働も増やす必要があるでしょう。労働力の増加に限界があって需要に対応しきれないのであれば、新たな技術を導入して(全要素生産性を高めて)限られた労働力で生産を増やす必要があるでしょう。
一方、海外から安い農産品が輸入されるようになれば国内の農業のうち競争力のないものは生き残れません。競争力をつけるか、農業をあきらめて新たな成長産業に転換する必要があるでしょう。これらは全要素生産性を高める効果があります。

4.金融緩和と財政出動
成長戦略ではありませんが、このアベノミクスの第1、第2の矢で実質利子率が低下すると投資が活発化します(IS-LMモデルの話の中でさんざん書きました)。これは資本の量の増加になります。また、投資のうちのあるものはIT投資であったり、研究開発投資であったりするでしょう。これらは全要素生産性の向上につながります。


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世の中大型連休ですが、わたしも4/30~5/2で有給取得して10連休にしました。といってもどこに出かける予定もありません。経済学の勉強をするのと、気が向いたらあと1,2回ブログを更新したいと思います。

つづく