では、マンデル=フレミング・モデルのもう一つの部品であるLM*曲線を導き出してみましょう。LM*曲線はIS-LMモデルのLM曲線と同様、貨幣市場の均衡(貨幣の需要と供給がバランスする点)をあらわします。まずLM*曲線をあらわす式を見てみましょう。
 M/P = L( r*, Y )
M:名目貨幣供給量、P:物価、M/P:実質貨幣供給量、r*:世界利子率、Y:産出
これはLM曲線の式
 M/P = L( r, Y ) (くわしくはこちら
r = r*を代入したものです。LM曲線のときは、方程式が1つで変数が2つ(r,Y)だったので、平面上に曲線のグラフを書くことができました。しかし、LM*曲線の式には変数が1つ(Y)しかありません(世界利子率r*は定数です)。ということは、Yについて解けば、Yは1つの値に決まってしまうっていうことです。前回のIS*曲線の導出で出てきたように、マンデル=フレミング・モデルでは縦軸が為替レート(e)、横軸が産出(Y)ですが、LM*曲線は為替レートに関係なく産出(Y)が決まってしまうということです。なので、縦軸が為替レート(e)、横軸が産出(Y)のグラフ上にLM*曲線を書くと、垂直の直線になってしまいます。
それではLM曲線、世界利子率、LM*曲線の関係をグラフでみてみましょう。
図0053_LMスター曲線の導出
上のグラフでM/P = L( r, Y )であらわされるLM曲線(1)とr=r*であらわされる世界利子率(2)の線の交点で産出Y1が決まります。それを下の縦軸が為替レート(e)、横軸が産出(Y)のグラフ上に書くと垂直な線となり、これがLM*曲線(3)というわけです。

しかし、世界利子率によって産出(=所得)が決められてしまうなんて、なんでこんなことになるんでしょう。特に不思議なのはLM曲線の時のY(産出)とr(利子率)の関係は「所得(=産出)が増えると貨幣需要が高まり利子率が上昇する」というようにY→rの方向の因果関係であって、その逆のr→Yの方向に影響をおよぼす(利子率が高くなると所得が増えるというような)メカニズムはなかったはずです。
う~ん、貨幣市場のはたらきだけでそれを説明する方法が思いつきません。今のところは、われわれが使っているモデル上はそうなのだ、ということにさせておいてください。具体的にはIS*曲線と組み合わせてはじめて「財政出動しても産出は増えない」といった現象としてあらわれるので、財政政策のはたらきを分析するときに、くわしく説明したいと思います。

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最近は、八田達夫先生のミクロ経済学の教科書 を勉強しています。日本の規制についての実例が豊富で規制政策の問題点が良くわかります。

つづく