さて、前回までマンデル=フレミング・モデルで小国開放経済(国内の利子率が世界利子率と等しくなる)かつ変動為替レート制(変動相場制)の場合に財政出動や金融緩和の効果をみてきました。しかし、前にも書いたようにこれでは日本に当てはめて分析することができません。なぜって、日本では日銀が金融政策を使って国内の金利を変化させることができるので、世界利子率に固定されているなどということはないからです。
それでは、開放経済(貿易のある経済)として日本経済を分析するにはどうすればいいでしょうか。それには閉鎖経済(貿易のない経済)のIS-LMモデルと開放経済のマンデル=フレミング・モデルを結合させて、大国開放経済モデルを作る必要があります。まずその準備として、純輸出と対外純投資の関係をみてみたいのですが、開放経済にいく前に、まず、閉鎖経済で投資貯蓄の関係についてみてみましょう。

国民経済計算の恒等式を思い出しましょう。閉鎖経済の場合はこうでした。
 Y = C + I + G
 Y:産出(=所得)、C:民間消費、I:民間投資(意図しない在庫投資を含む)
 G:政府購入
これを変形します。
 Y - C - G = I
左辺をさらに変形します。
 (Y - T - C) + (T - G) = I
 T:税金
左辺の (Y - T - C) は可処分所得(Y-T)から消費(C)を引いたものです。つまり、使わずに残っているお金ということなので、民間の貯蓄をあらわしています。また (T - G) は税金(=政府の所得)から政府の支出を引いたものですから、政府の貯蓄をあらわしていることになります(もっとも今の日本では、税収より国の支出のほうが大きいので、政府の貯蓄はマイナス(=財政赤字)になっていますが)。ということで左辺全体は民間と政府をあわせた日本全体での貯蓄をあらわすことになります。日本全体での貯蓄をSであらわすことにすると。
 S = I
となり、貯蓄と投資はつねに等しいということがわかります。
以前、IS曲線の話のなかで「IS曲線は貯蓄と計画投資が等しい点の集まりだ」って書きましたが、今回は計画外の投資(在庫の増減)まで含めた投資ですので、つねに成り立つのです。

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実は投資と貯蓄の関係については、完全に納得できていない部分があって、今回は筆がおそくなってしまいました。また勉強して納得できたらそのことについて書きたいと思います。