前回は可変費用曲線と総費用曲線まで勉強しました。もういちどそのグラフをみておきましょう。
このグラフの中で、可変費用曲線上のある一点に接線がひいてあり、「(傾き)限界費用」と書いてあります。限界費用(marginal cost)は可変費用を生産量で微分したもので、数学的には厳密ではないですが「生産量を1単位(たとえば小麦なら1トンとか)増やすのに必要な費用」と考えてください。
この限界費用(=可変費用曲線の接線の傾き)は生産量が小さいうちはほぼ一定(=可変費用曲線が直線的に上昇している)ですが、生産量が大きくなっていくとしだいに大きく(=可変費用曲線の接線の傾きが急に)なっています。
小麦の例で言うとたとえば1トン生産するには10万円の可変費用がかかるとします。生産量が小さいうちは傾きがほぼ一定ですから、2トンなら20万円、3トンなら30万円という具合に増えていきます。つまり生産量を1トン増やすのに必要な可変費用(=限界費用)は10万円と一定です。これが生産量が増えていって4トンだと41万円かかるとすると3トンから4トンに1トン増やすのには11万円(=41万円-30万円)かることになります。5トンだと53万円かかるなら4トンから5トンに1トン増やすのに12万円(=53万円-41万円)かかる、という具合に生産量を1トン増やすのに必要な可変費用(=限界費用)がだんだん増えていく、ということをあらわしています。
この限界費用の変化をグラフにしたのが次の図です。
このように生産量がふえるにしたがって限界費用が増加していくことを限界費用逓増の法則(「逓増」の読みは「ていぞう」で、「しだいに増える」ことです)といいます。話を前回、前々回とさかのぼっていくとわかるのですが、この限界費用逓増の法則はもともと、限界生産力逓減の法則(可変投入物を一定量ずつ増やしていっても生産量の増加はしだいに減少していくこと)からきています。
さて、ここでいくつか新しいことばを勉強しておきましょう。
まず、完全競争(perfectly competitive)ということばです。
ひとつのモノやサービスに多くの売り手がいて、ひとりひとりの売り手の販売量が市場全体の販売量にしめる割合が非常に小さいときは、ひとりひとりの売り手は市場価格に影響をおよぼすことができません。この売り手を完全競争的な売り手といいます。つまり、売り手は市場価格で好きなだけ(といっても市場全体にくらべればとても少ない量)売れるので、これより安く売る必要はありません。また、市場価格より少しでも高い値段をつけると買い手はほかの売り手から買うようになってしまい、まったく売れなくなってしまいます。
同様にひとりひとりの買い手の購入量が市場全体の購入量にしめる割合が非常に小さく、ひとりひとりの買い手が市場価格に影響をおよぼせないとき、この買い手を完全競争的な買い手といいます。ふつうの消費財の市場での消費者は通常、完全競争的です。あなたがスーパーに行っておコメを買うのに、いつもの2倍買うから安くしてくれといっても、ことわられるだけでしょう。
このような完全競争的な売り手や完全競争的な買い手のことを、市場できまった価格を受け入れざるをえない人という意味でプライス・テイカー(price taker)といいます。そして完全競争的な売り手と完全競争的な買い手からなる市場のことを完全競争市場(perfectly competitive market)といいます。完全競争市場には次の特徴があります。
1.取り引きされているモノやサービスはすべて同じ種類のものである
2.売り手と買い手が多数いて、市場価格に影響をあたえられるような単独の売り手や買い手はいない
つぎは収入(revenue)ということばについてです。収入は売り手が販売しているモノやサービスの売り上げです。収入は以下のように計算します。
収入 = 価格 × 販売量
生産したものがすべて売れると仮定すると(完全競争市場では売れるはずです)
収入 = 価格 × 生産量
と書くこともできます。つぎに収入を使って利潤(profit)を定義しましょう。
利潤 = 収入 - 総費用
です。
***********************************
事前の予想通り10月1日に安倍総理は来年4月からの消費税増税を決めましたね。前回の最後に「私は消費税増税に賛成」と書きましたが、これはあくまでも「消費税増税が条件つきながら決まっていて、そろそろ本当に増税するかどうか決定しなければならない」という状況のもとでの話です。日本の税体系全体の中で消費税の比率を増やしていくことが良いことかどうかは、まだ私の中で結論がでていません。
つづく
2013/10/12
限界費用の説明がちょっとわかりにくいかんじだったので、小麦の例を追加してみました
このグラフの中で、可変費用曲線上のある一点に接線がひいてあり、「(傾き)限界費用」と書いてあります。限界費用(marginal cost)は可変費用を生産量で微分したもので、数学的には厳密ではないですが「生産量を1単位(たとえば小麦なら1トンとか)増やすのに必要な費用」と考えてください。
この限界費用(=可変費用曲線の接線の傾き)は生産量が小さいうちはほぼ一定(=可変費用曲線が直線的に上昇している)ですが、生産量が大きくなっていくとしだいに大きく(=可変費用曲線の接線の傾きが急に)なっています。
小麦の例で言うとたとえば1トン生産するには10万円の可変費用がかかるとします。生産量が小さいうちは傾きがほぼ一定ですから、2トンなら20万円、3トンなら30万円という具合に増えていきます。つまり生産量を1トン増やすのに必要な可変費用(=限界費用)は10万円と一定です。これが生産量が増えていって4トンだと41万円かかるとすると3トンから4トンに1トン増やすのには11万円(=41万円-30万円)かることになります。5トンだと53万円かかるなら4トンから5トンに1トン増やすのに12万円(=53万円-41万円)かかる、という具合に生産量を1トン増やすのに必要な可変費用(=限界費用)がだんだん増えていく、ということをあらわしています。
この限界費用の変化をグラフにしたのが次の図です。
このように生産量がふえるにしたがって限界費用が増加していくことを限界費用逓増の法則(「逓増」の読みは「ていぞう」で、「しだいに増える」ことです)といいます。話を前回、前々回とさかのぼっていくとわかるのですが、この限界費用逓増の法則はもともと、限界生産力逓減の法則(可変投入物を一定量ずつ増やしていっても生産量の増加はしだいに減少していくこと)からきています。
さて、ここでいくつか新しいことばを勉強しておきましょう。
まず、完全競争(perfectly competitive)ということばです。
ひとつのモノやサービスに多くの売り手がいて、ひとりひとりの売り手の販売量が市場全体の販売量にしめる割合が非常に小さいときは、ひとりひとりの売り手は市場価格に影響をおよぼすことができません。この売り手を完全競争的な売り手といいます。つまり、売り手は市場価格で好きなだけ(といっても市場全体にくらべればとても少ない量)売れるので、これより安く売る必要はありません。また、市場価格より少しでも高い値段をつけると買い手はほかの売り手から買うようになってしまい、まったく売れなくなってしまいます。
同様にひとりひとりの買い手の購入量が市場全体の購入量にしめる割合が非常に小さく、ひとりひとりの買い手が市場価格に影響をおよぼせないとき、この買い手を完全競争的な買い手といいます。ふつうの消費財の市場での消費者は通常、完全競争的です。あなたがスーパーに行っておコメを買うのに、いつもの2倍買うから安くしてくれといっても、ことわられるだけでしょう。
このような完全競争的な売り手や完全競争的な買い手のことを、市場できまった価格を受け入れざるをえない人という意味でプライス・テイカー(price taker)といいます。そして完全競争的な売り手と完全競争的な買い手からなる市場のことを完全競争市場(perfectly competitive market)といいます。完全競争市場には次の特徴があります。
1.取り引きされているモノやサービスはすべて同じ種類のものである
2.売り手と買い手が多数いて、市場価格に影響をあたえられるような単独の売り手や買い手はいない
つぎは収入(revenue)ということばについてです。収入は売り手が販売しているモノやサービスの売り上げです。収入は以下のように計算します。
収入 = 価格 × 販売量
生産したものがすべて売れると仮定すると(完全競争市場では売れるはずです)
収入 = 価格 × 生産量
と書くこともできます。つぎに収入を使って利潤(profit)を定義しましょう。
利潤 = 収入 - 総費用
です。
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事前の予想通り10月1日に安倍総理は来年4月からの消費税増税を決めましたね。前回の最後に「私は消費税増税に賛成」と書きましたが、これはあくまでも「消費税増税が条件つきながら決まっていて、そろそろ本当に増税するかどうか決定しなければならない」という状況のもとでの話です。日本の税体系全体の中で消費税の比率を増やしていくことが良いことかどうかは、まだ私の中で結論がでていません。
つづく
2013/10/12
限界費用の説明がちょっとわかりにくいかんじだったので、小麦の例を追加してみました
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