平均費用独占の関係についてもう少し考えてみましょう。

前回、平均費用曲線と需要曲線の関係がこのような↓ときは産業に2社が存在でき
図0114_平均費用曲線と需要曲線_独占が起こらない場合


このような↓ときは2社は存在できない(=独占がおこる)ということをみました。
図0115_平均費用曲線と需要曲線_独占が起こる場合
ではこのような↓場合はどうでしょうか。
図0116_平均費用曲線と需要曲線_?な場合1
平均費用が需要曲線より低い位置にある範囲(A3からA4)で1社の平均費用は右下がりであり、規模の経済があります。しかし、需要曲線は2社の平均費用曲線とも交わっていますので、A1からA2の範囲であれば2社が存在できそうです。この場合は、この2社(A社、B社とします)がどのように発展するかによって変わってきます。
まず、B社より先にA社が事業を開始した場合を考えましょう。B社が事業を開始する前にA社の生産量がQ2を上回ってしまったら、もうB社に勝ち目はありません。B社はこの産業に参入できずA社の独占となります。
ではA社の生産量がQ2より少ないうちにB社が参入してきたらどうでしょうか。この場合、B社がA社と同じ価格で販売して損失が出ない限り、2社が並存することができます(ただし、このケースでは明らかに合併へのインセンティブがはたらきます。たとえばQ2の量を生産するにしても結局は1社で生産したほうが平均費用を安くすることができる、すなわち多くの利潤を得ることができますから、長い期間で考えれば企業買収や合併がおこり、1社に統合されて独占になってしまうでしょう)。

次にこのような↓場合を考えてみましょう。
図0117_平均費用曲線と需要曲線_?な場合2
点A0は1社の平均費用が最小になる点です。1社の平均費用が点A0からA2の範囲では、数量が増えるほど平均費用が増加しています。このようは状態を規模の不経済がある、といいます。しかし、一部に規模の不経済があるとはいえ、2社の平均費用曲線はいつも需要曲線より上にあるので、2社が参入することはできず独占となります。

最後にこんな↓場合はどうでしょうか。
図0118_平均費用曲線と需要曲線_完全競争の場合
需要曲線が水平になっています。こういう状態を「需要の価格弾力性が無限大」といいます。ふつう需要曲線は右下がりですよね。こんなことってあるのでしょうか。これは本当は横軸をずっと右のほうへ延長していくと少しずつ下がっているのですが、この横軸の目盛りのとりかたではほとんど水平に見えるということなのです。つまりこれは完全競争市場の場合をあらわしています。完全競争市場では個々の売り手は市場価格(ここではP0)でいくらでも売ることができたことを思い出してください(くわしくはこちら)。いいかえると、市場全体の需要量に比べて個々の生産者が生産できる量はとても小さいということです。この場合では2社どころか何社でも参入することができます。

2015/1/3
図114が微妙だったので修正したのと、図116のところで合併に関する記述をカッコに入れました。


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12月29日(月)(2014年)は会社は休みではないのですが、個人的に休みをとって9連休にしました。休みの間に経済学の勉強をがんばりたいのですが、もうひとつやりたいのが、今使っているPCのWindows Vistaをインストールしなおすことです。かれこれ5年使っているPCですが、最近動きが遅くてイライラすることが多いのでインストールしなおせば少しは速くなるのではないかと...ところが、これがなかなかうまくいかず、今いったんバックアップからもとにもどしてこのブログを書いています。年内はこれが最後の更新になると思います。みなさま良いお年を

つづく