※これは電力システム改革の話です。自分の家の電気料金を今すぐ安くしたい方のための記事ではありません。

今回も電気料金を安くする方法について勉強します。この話は今回が最後になります。

1-4. 地点料金制を採用する


教科書として使用している「電力システム改革をどう進めるか」によると、「現在、電力は、東日本では大勢として東北から首都圏へ送電されている」そうです。国内の原発が全てとまっている現在(2015年3月)でも本当にそうなのか多少疑問もありますが、ここでは正しいとしておきましょう。このような電力の大きな流れのことを潮流といいます。ところで、電力を長距離送電する場合、送電ロスが発生します。現在、国内の全発電量の6%がこの送電ロスで失われているそうです。つまり東北で100発電して送電線に送り込んでも、それを全て東京で使おうとしても94しか取り出せないということです。

このとき、潮流にさからって東京で発電して東北で使う場合どうなるでしょうか。この場合、東北から東京に向かって送電線を流れる電流は減少します。理由はこうです。「東京で発電して東北で使う」といっても、電気に色はついていないので東京で発電した電気は実際には東京の需要家に使われることができます。同様に東北で電力を使うときは東北で発電した電気を使うことができます。そうすると、今まで東北で発電して東京に送っていた電力の一部を東京におくらずに東北で使い、また東北から送られ東京で使われてきた電力の一部は東京で発電された電力にとってかわられることになります。その分、東北から東京に流れる電流が減少します。これにより、全体では電力の発電量・使用量が増加しているのに、送電ロスは減少することになります。送電ロスが減少すれば、送電ロスをカバーするためのよぶんな発電が必要なくなるので、その分全体では費用が減少します。また、東京で発電して東北で使うような電力が増えてくれば、長期的には送電設備への投資をおさえる(さらには、設備を削減する)ことができます。このように潮流にさからう場所に発電所や、電気を大量に使う工場などを建設すれば、全体として電気料金を安くすることができます。

では、そのような場所に発電所や工場を建設させるにはどうしたらいいでしょうか。それが地点料金制です。前々回の1-2-3で書いたように、理想の電力システムでは発電事業と送配電事業は分離されます。このとき、送配電事業者にたいして発電事業者は注入料金を、需要家は受電料金をはらうようになるのですが、注入料金を東北では高く、東京では安く、受電料金は東京では高く、東北では安く設定することにより、東北に工場を作ったり、東京に発電所を作ったりするインセンティブ(動機)をあたえることができます。もう少し正確にいいましょう。注入料金と受電料金はは設備の費用を回収する部分と送電ロスの費用をまかなう部分の合計として設定されますが。送電ロスの費用をまかなう部分をそれぞれの地点での注入限界費用および受電限界費用に等しくするのです。注入限界費用というのは1単位の電力量(1kWhとか)を送電網に注入するときに発生する送電ロスによる費用に増加額のことをいいます。したがって、この部分は東北ではプラス、東京ではマイナスになります。また、同様に受電限界費用は1単位の電力量を受電するときに発生する送電ロスによる費用に増加額のことで、東京ではプラス、東北ではマイナスになります。

 ところが現在は、ひとつの一般電気事業者の管轄地域内では場所によって需要家への電気料金や新電力が送電網を利用するときの利用料金が変わることはありませんので、潮流に逆行するような発電や需要をうながすようなインセンティブは発生しません。
 
電気料金を安くする方法についてはこれで終わりです。次回は停電が起きないようにする方法についてです。

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つづく