前回、外部不経済とピグー税について勉強したので、電力システムが環境へあたえる影響を少なくする話を進めましょう。

3. 環境への影響がすくないこと


前回の頭でもちょっとふれましたが、テーマとしては地球温暖化対策としての二酸化炭素排出削減原子力発電所をどうするか、の2点です。では二酸化炭素からいきましょう。

3-1. 二酸化炭素(CO2)の排出量を削減する

基本的には前回勉強したピグー税を採用することです。CO2排出1トンあたりx円というピグー税をかけるのです。これを特に炭素税といいます。これにより、CO2を多く排出する効率の悪い発電機で作った電力は価格が高くなり競争力が低下します。反対にまったくCO2を排出しない再生可能エネルギー(水力、地熱、風力、太陽光など)には炭素税がかからないですし、化石燃料を使う発電でもCO2排出が少ない天然ガスを使った発電は炭素税の負担が小さいので、こういった電源の競争力が高まります。結果としてCO2排出の多い発電機は使われないようになり、排出が少ない電源が普及することになります。

3-1-1. CO2の排出に対して炭素税をかける

ちょっと考えればわかりますが炭素税を負担するのは電力産業だけではありません。発電以外でもCO2は排出されるからです。自動車の使用、工場や家庭でのガスの使用などにも同様に炭素税をかけて、電力産業だけでなく日本全体でCO2の排出を減らしていくことが必要です。

ではいったいいくらの炭素税をかければいいのでしょうか。CO2排出による地球温暖化の外部費用を見積もることはむずかしいことですが、教科書では、とりえず世界標準程度(=EUなみ)に引き上げればよく、それ以上にする必要はない、としています。炭素税は現実的には化石燃料(石油、石炭、天然ガスなど)への間接税というかたちで課税されますが、例えば火力発電の燃料としてよく使われている重油への課税は日本がCO2排出1トンあたり1,068円に対してイギリスでは5,680円だそうです(イギリスの金額は2012年時点の為替レートで計算していると思われるので、2015年現在では円安のためたぶんこの1.5倍ぐらいになっていると思います)。

3-1-2. 炭素税の税率を世界標準レベルに引き上げる

このように書くと「あれっ? 日本に炭素税なんてあったっけ?」て思うかもしれません。CO2排出削減を目的とした税という意味では、2012年10月から「地球温暖化対策のための税」という名目で「石油石炭税」の税率にCO2排出1トンあたり289円を上乗せするという形で導入されています。ただし「地球温暖化対策のための税」以外でも化石燃料に課される税金はすべて炭素税としてはたらくので、先ほどの重油に対して1,068円というのは石油石炭税全体の税率を示しています。

このように炭素税によってCO2排出の少ない発電機が有利になることで普及していき、CO2排出の多い発電機がが不利になることで使われなくなり、結果としてCO2排出が減少していく、というプロセスがはたらくためには前提があります。それは、市場でいろいろな発電機が自由に競争できるような環境が必要だということです。いくら世界標準なみの炭素税を導入たとしても、競争がなく需要家が発電事業者や発電機を選べなければ、あるいは電力供給が不足しているときにその時点でもっとも限界費用(1kWhよけいに発電するためにかかる費用)の安い発電機から調整用の電力が調達される、という仕組みがなければこのプロセスははたらきようがないのです。したがって、いままで「電気料金を安くするにはどうすればいいか勉強してみる」や「停電がおきないようにするにはどうすればいいか勉強してみる」のシリーズで書いてきたような参入や料金の自由化、市場の機能を強化するような施策はすべて炭素税のもとでCO2排出を削減するのに役立つのです。

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先日(現地時間2015年4月29日)安倍首相がアメリカの議会で演説を行いました。賛否いろいろな意見があるようですが、私はなかなかすばらしい演説だったと思いました。その演説なかでTPPと農業改革にふれた部分がありましたが、TPPに関しては「As for U.S.-Japan negotiations, the goal is near(日米間の交渉は、ゴールがすぐそこに見えています)」だそうです。TPPで農産物の貿易が活発になるのと同時に農業改革によって日本の農業が競争力のあるものになってほしいと思います(このブログのTPP関連の記事はここからここまで)。

つづく