前回まで「理想の電力システムはこんなもの」というのを教科書をもとにして見てきました。今回は今の電力システム、そして2020年までに計画されている電力改革の概要についてみていきましょう。

こちらに書いたように、以前は一般電気事業者(東京電力などの9電力会社+沖縄電力)と2社の卸電気事業者(電源開発、日本原子力発電)以外は電力事業を行うことはできませんでしたし、一般電気事業者も他の電力会社の管轄地域に電力を売ることは禁止されていました。
日本で電力事業の自由化がはじまったのは1995年です。この年から2015年現在までは以下の点で自由化が進められました。

1)
発電してその電力を一般電気事業者に卸売りするIPP(独立系発電事業者)の参入がみとめられた。

2)
発電してその電力を需要家に小売するPPS(特定規模電気事業者、いわゆる新電力)の参入が認められた。ただし、売り先の需要家に制限があり、当初は契約電力2,000kW以上の大口需要家が対象でした。この制限は段階的にゆるめられ、2005年以降は50kW以上となっています。

3)日本卸電力取引所JPEX)の設立による卸売市場の開設

このように、たてまえとしては電力事業への参入は自由化されていますが実際には新規参入は少なく、小売について言うと新電力の供給量は全需要の2%程度、自由化されている需要(契約電力50kW以上の需要家の需要)の3.5%程度となっています。新電力からの供給が増えない理由として以下の点があります。

1.
新電力が発電した電気は一般電気事業者の送配電網を利用して契約した需要家にとどけられます(託送といいます)が、この託送料金が高い、あるいは託送料金の決定方法が不透明で新電力に対して公平になっているかわからない。

2.
新電力は契約した需要家の需要に対して30分間の需要量と供給量が等しくなるように求められます(これを30分同時同量といいます)。そして、需要に対して供給が多すぎた場合はその余分な電力はただで没収され、需要に対して供給が少なかった場合は、3%までであれば1kWhあたり約10円、3%以上では30円というペナルティが課せられます。これは一般電気事業者には適用されず、新電力だけに適用されるのでとんでもなく不公平だといわれています。

こういった問題にくわえて2011年3月の東日本大震災および福島原子力発電所の事故をきっかけに出てきた問題(計画停電するしかなかった、原子力発電の割合を下げざるを得ない、など)に対応するため電力システム改革の議論が活発になり、今後2020年までに大幅な改革がおこなわれることになりました。その概要は以下のとおりです。

 ・2015年 地域間の電力融通機関を設置
 ・2016年 小売の全面自由化
 ・2018~20年 発送伝分離、料金規制撤廃

次回からは、理想的な電力システムと比較しながら現在の制度と2020年までに計画されている改革の内容についてくわしく見ていきたいと思います。

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住民投票で大阪都構想が否決されました。個人的にはとても残念に思います。反対派は今のままでも二重行政の排除や地下鉄・バスの民営化などのコスト削減はできると主張していたのですから、こういった改革は当然やっていくのですよね~、柳本さん。

つづく