前回は1995年以降に行なわれてきた日本の電力自由化と今後2020年までに計画されている電力システム改革についておおざっぱに見てみました。今回からは、前々回まで書いてきた「理想の電力システム」がどこまで実現されるかという観点で、もう少しくわしく見ていきましょう。

まず、電気料金を安くするような施策についてです。以前の記事の中で理想的な電力システムが電気料金を安くするためにするべきこととしてあげたのは以下の項目です。

1. 電気料金が安いこと
1-1. 独占の弊害であるX非効率性を小さくする
1-1-1. 独占を認める事業領域をできるだけ小さくする
1-1-2. 独占事業である送配電にプライスキャップ制やヤードスティックを適用する
1-2. 発電事業はなるべく競争的な環境にする
1-2-1. 発電と小売への参入を自由化する
1-2-2. 発電事業では総括原価主義をやめて料金を自由化する
1-2-3. 一般電気事業者の発電部門を分離・分割する
1-3. 確定数量契約が行えるようにする
1-4. 地点料金制を採用する


まずこれらの項目の見方について説明します。理想的な電力システムの目標として
1. 電気料金が安いこと
があり、それを実現するための方法として
1-1. 独占の弊害であるX非効率性を小さくする
1-2. 発電事業はなるべく競争的な環境にする
1-3. 確定数量契約が行えるようにする
1-4. 地点料金制を採用する

という4つ施策があります。1-1と1-2についてはさらに具体的に書いていて、1-1には
1-1-1. 独占を認める事業領域をできるだけ小さくする
1-1-2. 独占事業である送配電にプライスキャップ制やヤードスティックを適用する

という2つの具体的な方法があり、1-2には
1-2-1. 発電と小売への参入を自由化する
1-2-2. 発電事業では総括原価主義をやめて料金を自由化する
1-2-3. 一般電気事業者の発電部門を分離・分割する

という3つの具体的な方法がある、ということをあらわしています。

ではまず
1-1. 独占の弊害であるX非効率性を小さくする
についてです。X非効率性というのは1つの会社がある産業を独占しているとコスト削減する動機がないために高コスト体質になることで、結果として価格が高くなってしまいます。このための具体的な対策としては
1-1-1. 独占を認める事業領域をできるだけ小さくする
ですが、もっと具体的にいうと、いわいる発送電分離(発電事業と送配電事業を1つの会社で行うことを禁止)をして、送配電事業にだけ独占をゆるして、発電電事業については参入自由化と独占の禁止を行うということになります。発電事業への参入は現在でも自由化されていますが、一般電気事業者(東京電力などの9電力会社)の送配電部門を別会社として切り離すことを義務付ける法律は2020年に施行される計画(このための法律は今(2015年5月)やってる国会で成立するみこみ)です。別会社とはいってもたとえば関西電力の送配電部門であれば関西電力のグループ会社になることが想定されていますが、その場合でも役員の兼務の禁止など、なるべく中立になるような制限がかけられます。2つめは
1-1-2. 独占事業である送配電にプライスキャップ制やヤードスティックを適用する
です。2020年以降も送配電事業は独占のまま残ります。そこで送配電事業でのX非効率性を小さくするためにプライスキャップ制ヤードスティックを適用することが考えられますが、これに関しては今のところ情報がありません。

2つ目の中項目である
1-2. 発電事業はなるべく競争的な環境にする
についてみてみましょう。具体的な施策の1番目は
1-2-1. 発電と小売への参入を自由化する
です。発電事業はすでに自由化されていますし、小売事業に関しても契約電力50kW以上に関しては自由化されています。小売事業の50kW以上という制限をなくし、一般家庭でも電力会社を選べるようにする法律はすでに成立していて2016年4月に施行される予定です。
次に
1-2-2. 総括原価主義をやめて料金を自由化する
2016年4月の小売り自由化の時点で自由な料金メニューを設定できるようになりますが、自由化で逆に料金が高くなることをふせぐため総括原価主義による規制料金のメニューも当面は残ります。規制料金の完全な廃止に関しては発送電分離と同じ法案に含まれています(つまり2020年に施行予定です)。ただし、「市場の状況が十分競争的になったかどうかエリアごとに判断して、OKなら料金規制を完全に廃止する」ということになっているので、状況によっては2020年以降もしばらく総括原価の料金が残る可能性はあります。

次に
1-3. 確定数量契約が行えるようにする
ですが、これには少し説明が必要です。
確定数量契約の意味について詳しくはこちらを読んでもらえばいいのですが、簡単に言うと電力会社と各需要家が時間ごとの使用電力と価格を決めてしまう契約のことで、電力会社は過剰設備をかかえる動機がなくなるためコスト削減ができ、ひいては電気料金を安くすることができます。
理想的な電力システムの教科書としていた「電力システム改革をどう進めるか」では、需要家が直接発電事業者と契約するようなイメージになっていましたが、今考えられている仕組みでは、発電事業者と需要家の間に小売事業者がはいります。そして小売事業者が自分が契約している需要家の需要量をまかなうだけの電力を確保する義務を負うことになります。ですから発電事業者としては需要家の気まぐれにつきあうために、余分な設備をかかえる必要がなくなります。そのかわり、小売り事業者には需要をなるべく正確に予測して供給計画を作成すること、その計画をみたすだけの電力をきっちり集めてくること、そして需要家があまり好き勝手に使いすぎないようコントロールする(使いすぎた場合にペナルティーを課すなど)ことが求められることになります。というわけで、この項目は確定数量契約というわけではないですが方向性は一致していると考えてよいでしょう。
 
次は
1-4. 地点料金制を採用する
です。地点料金制では電力の潮流と同じ方向の送電料金を高くし、反対方向を安くすることで送電設備への投資をおさえることができるのですが、これは潮流と逆方向の送電に対して割引料金を適用するということで検討が進んでいるようです。

2015/6/6更新
公開当初は確定数量契約と地点料金制について「検討されていないようだ」と書いてしまいましたが、よく調べたら検討されている(確定数量契約についてはそのものではないですが)ことが分かったので修正しました。

2016/1/28更新
1-2-2で2016年4月以降2020年まで、自由化料金と総括原価主義による規制料金が並存するということがわかりにくかったので修正しました。

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最近ハイレゾが気になってます。ハイレゾウォークマンのNW-A16 が価格コムの最安値で22,000円ぐらいなのでこれなら買ってもいいな、と思うんだけど、付属のイヤホンがハイレゾ対応ではないので、ハイレゾ対応のそれなりのヘッドホンを買おうとすると追加で2~3万円かかるのが悩みどころ。1万円以下でハイレゾ対応 というのもあるんだけど、せっかくならいいものをって思ってしまう今日この頃...

つづく