原子力発電の話しに行く前に、二酸化炭素削減について書いておかなければならないことがあります。それは再生可能エネルギーの固定価格買取制度についてです。
再生可能エネルギーの固定価格買取制度は二酸化炭素の排出を抑制するために再生可能エネルギーの普及を促進するということで、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスで発電した電力を、通常の価格より高い固定価格で10年とか20年といった期間にわたって買い取ることを一般電気所業者(東京電力など9電力+沖縄電力)に義務づけるものです。固定価格と買い取り期間はその電源の種類ごとにこのぐらいなら採算がとれるだろうというふうにして決められています。また、この固定価格は技術の進歩によってしだいに費用が安くなっていくことを考えて、事業を始めた年によって年々下がっていきます。例えば2012年に10kW以上の太陽光発電事業を始めた場合、20年間という長期にわたって1kWhあたり43.2円という高い値段で買い取ることになります。ですが、この固定価格買取制度にはいろいろ問題があります。「事業を始めた年」というのが現状では役所に届出を出した年が適用されていて、届出だけ出してなかなか実際に事業を始めないというケースが相当の割合をしめているとか、供給が多すぎて接続容量の限界に達したとか安定供給が困難になるとかの理由で新規受け入れを中断するといったことがおきています。また、手軽に始められる太陽光発電にあまりにもかたよってしまっているというような問題もあり、経済産業省は制度の大幅な見直しを行っています。
とまあいろいろある再生可能エネルギーの固定価格買取制度ですが、教科書(八田達夫/電力システム改革をどう進めるか)では以下の理由から「すぐに廃止すべき」としています
1.温暖化対策は発電に限るべきではなく、産業用(例:製鉄のために石炭から作られるコークスをもやすこと)、輸送用(自動車のためのガソリン・軽油の燃焼など)もふくめて、均等に二酸化炭素排出抑制に効果のある政策(=炭素税)を行うことで、効率的な排出抑制ができる
2.二酸化炭素排出抑制に効果的な石炭・石油からガスへの燃料転換がおきない
3.日本で二酸化炭素排出を大規模に削減するのに最も有効な石炭のガス化技術の開発に役立たない
* * * * *
原子力発電の話にうつりましょう。以前の記事の中で理想的な電力システムが環境への影響を減らすためにするべきこととしてあげたもののうち原子力発電に関係するのは以下の項目でした。
3-2. 原子力発電を適切に使用する(または使用しない)こと
3-2-1. 原子力発電に適切な額の保険をかけて、電気料金に上乗せする
3-2-2. 使用済み核燃料の引き取り価格を決定し、電気料金に上乗せする
簡単に復習しておきましょう。保険に関しては今でも一応あるのですが保険金額が安すぎて福島の事故のような事態にはまったく対応できないので、事故がおきた場合の被害額と事故の発生頻度を見積もりなおして適切な保険料を算出します。保険料と使用済み核燃料の引き取り費用を電気料金に上乗せして回収し、それで原子力発電に競争力がなくなるのであればなくなっていくでしょうし、それでも競争力を維持できるのであれば将来にも一定のシェアを維持できるでしょう、ということでした。
ですが、わたしが調べた限りではとくにこのような動きはないようです。
* * * * *
ここまで4回にわたって、理想的な電力システムと2020年までに計画されている電力システム改革を比較してきました。まとめると、電気料金を安くすることと停電をおきないようにすることに向けた改革に関してはかなりいい線いっている感じですが、環境への影響を少なくするという点に関してはまだまだっていうところでしょうか。
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奮発してハイレゾ対応ウォークマンNW-A16 とハイレゾ対応ヘッドホンMDR-1A を買いました。最初にダウンロードしたハイレゾ音源はドビュッシーのピアノ曲ですが、ホールの広々とした空間を感じることができます。
つづく
再生可能エネルギーの固定価格買取制度は二酸化炭素の排出を抑制するために再生可能エネルギーの普及を促進するということで、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスで発電した電力を、通常の価格より高い固定価格で10年とか20年といった期間にわたって買い取ることを一般電気所業者(東京電力など9電力+沖縄電力)に義務づけるものです。固定価格と買い取り期間はその電源の種類ごとにこのぐらいなら採算がとれるだろうというふうにして決められています。また、この固定価格は技術の進歩によってしだいに費用が安くなっていくことを考えて、事業を始めた年によって年々下がっていきます。例えば2012年に10kW以上の太陽光発電事業を始めた場合、20年間という長期にわたって1kWhあたり43.2円という高い値段で買い取ることになります。ですが、この固定価格買取制度にはいろいろ問題があります。「事業を始めた年」というのが現状では役所に届出を出した年が適用されていて、届出だけ出してなかなか実際に事業を始めないというケースが相当の割合をしめているとか、供給が多すぎて接続容量の限界に達したとか安定供給が困難になるとかの理由で新規受け入れを中断するといったことがおきています。また、手軽に始められる太陽光発電にあまりにもかたよってしまっているというような問題もあり、経済産業省は制度の大幅な見直しを行っています。
とまあいろいろある再生可能エネルギーの固定価格買取制度ですが、教科書(八田達夫/電力システム改革をどう進めるか)では以下の理由から「すぐに廃止すべき」としています
1.温暖化対策は発電に限るべきではなく、産業用(例:製鉄のために石炭から作られるコークスをもやすこと)、輸送用(自動車のためのガソリン・軽油の燃焼など)もふくめて、均等に二酸化炭素排出抑制に効果のある政策(=炭素税)を行うことで、効率的な排出抑制ができる
2.二酸化炭素排出抑制に効果的な石炭・石油からガスへの燃料転換がおきない
3.日本で二酸化炭素排出を大規模に削減するのに最も有効な石炭のガス化技術の開発に役立たない
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原子力発電の話にうつりましょう。以前の記事の中で理想的な電力システムが環境への影響を減らすためにするべきこととしてあげたもののうち原子力発電に関係するのは以下の項目でした。
3-2. 原子力発電を適切に使用する(または使用しない)こと
3-2-1. 原子力発電に適切な額の保険をかけて、電気料金に上乗せする
3-2-2. 使用済み核燃料の引き取り価格を決定し、電気料金に上乗せする
簡単に復習しておきましょう。保険に関しては今でも一応あるのですが保険金額が安すぎて福島の事故のような事態にはまったく対応できないので、事故がおきた場合の被害額と事故の発生頻度を見積もりなおして適切な保険料を算出します。保険料と使用済み核燃料の引き取り費用を電気料金に上乗せして回収し、それで原子力発電に競争力がなくなるのであればなくなっていくでしょうし、それでも競争力を維持できるのであれば将来にも一定のシェアを維持できるでしょう、ということでした。
ですが、わたしが調べた限りではとくにこのような動きはないようです。
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ここまで4回にわたって、理想的な電力システムと2020年までに計画されている電力システム改革を比較してきました。まとめると、電気料金を安くすることと停電をおきないようにすることに向けた改革に関してはかなりいい線いっている感じですが、環境への影響を少なくするという点に関してはまだまだっていうところでしょうか。
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奮発してハイレゾ対応ウォークマンNW-A16 とハイレゾ対応ヘッドホンMDR-1A を買いました。最初にダウンロードしたハイレゾ音源はドビュッシーのピアノ曲ですが、ホールの広々とした空間を感じることができます。
つづく
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