実際に計画されている電力システム改革では、教科書(八田達夫/電力システム改革をどう進めるか)には書かれていない施策があります。それは広域的運営推進機関の設立です。
ここで「広域」というのは各一般電気事業者(東京電力などの9電力会社+沖縄電力)が管轄するエリアをまたいで業務を行うことを意味しています。この組織は主に以下の業務を行うとされています。

1.日本全体の供給計画を取りまとめて、将来の需要に必要と予想される送電インフラの増強を指導・勧告します。

2.日々の運用として、設備保守作業のための停止計画を調整します。

3.広域での需給調整を行います。需給調整は各エリア内で行うことが原則ですが、今後太陽光や風力など不安定な電源が増加すると、エリア内だけの調整ではおいつかず、エリアをまたいで調整する必要が出てくることが想定されています。

4.電力不足が発生しそうなときは、追加の発電や、予備発電力を使うことを電力会社に指示します。

これによって、各エリア内だけで管理しているときよりも一層電力の供給を安定させ、停電がおきないようにするのがねらいです。実はこれ以前にも電力系統利用協議会(ESCJ)という組織があり、電力不足がおきそうなときに「一般電気所業者からの依頼があれば」広域で「調整を行う」という仕事をしていましたが、追加の発電や予備発電力を使うことを指示したりすることはできませんでした。ESCJに比べると広域的運営推進機関は格段に役割と権限が強化されています。

で、この広域的運営推進機関は電力広域的運営推進機関という名称で2015年4月1日に設立され、業務を開始しています。

先ほど、この試作は教科書には書かれていないといいましたが、教科書には連携線(エリアをまたぐ送電線)の利用ルールに関する提案は書かれています。しかし、広域的運営推進機関との関連についてよくわからなかったので、理想的な電力システムの要件としてはあえてあげていませんでした。

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電力システム改革のシリーズはこれで終わりです。次のネタを仕入れるのに時間がほしいのでブログの更新は少しお休みさせていただきます。

つづく